ワルワーラ・ブブノワのイコン


 1922(T11)年から58(S33)年まで日本に居住しロシア構成主義などの前衛美術を紹介したロシア人画家ワルワーラ・ブ
ブノワの作品で、関東大震災によりニコライ堂が崩落した後に境内に建てられたニコライ小聖堂に1925(T14)年9月に
献納されたイコン(聖像)である。しかし、小聖堂が1962(S37)年に解体された後、行方がわからなくなったが仙台の主
教セラフィム座下により2008(H20)年8月にニコライ堂内の倉庫区域で発見された。その後、「修復研究所21」に洗浄を
依頼し、往時の姿が取り戻された。現在は仙台ハリストス正教会に移され、信徒会館ホールに設置されている。

 ロシア革命後宗教が弾圧されていた時期に旧ソ連ではイコンはほとんど描かれていない。ブブノワが日本に滞在して
いたからこそ描けた貴重な作品といえ、前衛画家によって伝統様式にのっとって描かれたことと合わせて歴史的にも貴
重であり、ロシアの研究者からも注目されている。

  ワルワーラ・ブブノワ 1886-1983

 バイオリンの指導者小野アンナの実姉。大正11年来日、昭和33年帰国するまで画業の他、ロシア語、ロシア文学の
教育にあたった。それらの功労により昭和57年に日本政府から勳四等宝冠賞が贈られた。




総ての悲しむ者の慰藉(なぐさめ) 180cmx145cm
Всех скорбящих Радосте

※大正14年10月号の正教時報では「Радосте(慶び)」を「慰藉(なぐさめ)」と翻訳している。


【イコン左下の銘文】

Икона сия сооружена 
усердиемъ русскихъ в память 
благополучного проживания 
ихъ въ Японии съ 1920 года

[日本語訳]
このイコンは、1920年より日本に住
むロシア人たちの篤信により、平穏な
生活の日々の記憶として作成された

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http://www9.ocn.ne.jp/~higashi/Barbara.doc